図書館経営における課題と文献展望 ↑戻る
Current Problems in Library Mangement.
長谷川豊祐:はせがわ とよひろ:鶴見大学図書館
キーワード:図書館経営:アウトソーシング

このページは日本図書館協会が発行する『現代の図書館(1998年12月号)』に掲載される私の論文をもとに構成してあります。 長谷川豊祐 HASEGAWA, toyohiro  c05119@simail.ne.jp


 0.はじめに  
 1.拡大と縮小 
 2.存在基盤の強化  
   2−1.存在基盤の状況  
   2−2.設置母体の求める図書館とその運営 
   2−3.利用者の求める図書館とその運営 
 3.アイデンティティーの確立 
   3−1.図書館と利用者との関係 
   3−2.カシオの戦略 
   3−3.紙と電子のミックス 
 
 4.積極経営のすすめ 
   4−1.図書館経営 
   4−2.とにかく行動を:「一太郎」の油断 
   4−3.生産性の向上 
       (1)エラーの回避 
       (2)組織整備 
       (3)業務整備 
       (4)マルチソーシング 
       (5)人員整備:能力開発 
 おわりに 
 参考文献
0.はじめに

 正しい情勢判断と適切な戦略,それを機敏に具体化する力をもった組織にとっては,競争相手が不振にあえぐこの時代こそ,大きく業績を伸ばすチャンス(好機)の時代である.景気の停滞や個人消費の落ち込みによって,営利組織は業績不振にあえいでいる.また,官公庁・地方自治体,教育機関,研究機関等の非営利組織は,財源不足に悩まされている.しかし,すべての組織が不振なわけではない.社会情勢の変化への対応を誤らず,適切な戦略をもって新たな活動を展開している組織は,順調な成果を達成している◆1)

 ソニーは,大半の企業が個人消費の低迷による業績不振のなかで,好調に業績を伸ばしている.ゲーム機・プレイステーション,平面テレビ・ベガ,薄型パソコン・バイオなど個人向け商品が大ヒットし,1998年度3月期決算で過去最高の売り上げと利益を上げている.ソニーが利益を伸ばしているのは,技術開発とマネジメントの力といわれているが,過去におけるビデオでのベータ方式の敗退,パソコンからの一時撤退など,常勝というわけではない.「商品というものは「安い」ということではなく,本当は「欲しくないか」ということでしょ.幸い当社がつくるものは,みんなが欲しがるものが他社に比べて少しは多いということで,売れているんだよね」◆2)とのソニー社長の談話がある.

 利用者の「欲しくなる」図書館へ,設置母体の「欲しくなる」図書館へと変革していくこと◆3)-7)が今後の図書館の使命となる.図書館の経営的な課題は,利用者と設置母体の求める図書館像と図書館員の求める図書館像が大きくずれ始めたところへ,職員・予算などの資源縮小という悪条件が重なって,多様に拡大するサービス要求をうまく捌ききれなくなった点にある.設置母体と館員の認識の不一致は,図書館の運営について顕著に存在し,そのため,図書館の存在基盤そのものも揺らぎはじめている.図書館の役割や運営についての認識を一致させるには,図書館のアイデンティティーを確立し,図書館を広く設置母体や社会全体にたいしてアピールし,図書館の存在基盤を確固たるものにしなければならない.また,限られた資源を有効に使ってサービスを高度化し,図書館の役割をさらに拡大するためには,適切で積極的な経営戦略の立案・遂行が必要になってくる.

 本稿では,図書館経営における課題の概略を示した.最初の「拡大と縮小」では図書館のおかれている現状を展望した.次に,図書館が周囲からどのように見られているのかを「存在基盤の強化」で,これからの図書館は何をすべきなのかを「アイデンティティーの確立」で概観した.最後に「積極経営のすすめ」を一つの解決策として提示した.参考文献では,管理職と現場職員の両方にとって図書館の経営管理を考える上で有用かつ刺激的なものを紹介した.


1.拡大と縮小 

 近年の図書館は,図書館サービスを高度化しつつ,拡大する図書館サービスへの需要をこなさなければならない.しかし,設置母体の業績不振を反映して,大多数の図書館においては,人員と予算が不足しがちである.この厳しい状況は,館種が異なる公共図書館,大学図書館,学校図書館◆8),専門図書館でも,海外◆9)-10)でも変わりはない.

 図書館サービスの拡大には以下のものがある.

  a)図書館の利用対象の拡大

  b)図書館機能の拡大

  c)サービスと利用者の多様化

 大学図書館では学外者や地域住民への解放,公共図書館では広域利用などの在住・在勤者以外へのサービス解放が,社会的要請によって開始され始めている.大学図書館でも障害者サービスを日常業務として検討し始めている◆11).大学図書館と公共図書館の館種を越えた協力も一部で実施されている.

 図書館機能では,コンピュータ技術とネットワーク技術の進展による総合目録,OPAC,オンラインDB,インターネットなど,検索機能の拡充がなされ,それにともなって,図書館間相互協力も増加している.大学図書館においては,日本の大学図書館の総合目録であるNACSIS WebCat <http://webcat.nacsis.ac.jp/> によって所在確認が容易になり,現物貸借が増加している.現物貸借は発送・返送・料金決済にかなりな作業を要し,図書館業務を圧迫し始めている.

 情報媒体の多様化により,図書館のサービスや利用者が多様化し,図書館で取り扱う資料の種類も拡大している.CD-ROM,オンライン検索,インターネットの導入に関する予算措置,利用者への操作説明,機器のメンテナンスやバージョンアップ,館員向けの操作研修など,新たに発生した業務量は少なくない.図書,雑誌,視聴覚資料に続く第四の資料群が出現したといえる.また,図書館の社会への定着に伴い,利用者の要求は量的に増加し,質的にも高度化している.これらのサービスの拡大化傾向は今後も続くものと考えられる.

 サービスの拡大にも関わらず,図書館資源は縮小している.

  a)図書館予算の減少

  b)図書館職員の量的な減少と能力低下

  c)組織疲労による損失

 図書館予算は金額的には据置か削減傾向にある.また,図書館機能拡大に伴う施設・設備などの運営費の拡大と資料費のバランスをとることも必要になり,予算は相対的にも減少している.

 新設される図書館があるので図書館職員の総数は増加しているが,各館レベルでは量的に減少している.さらに,利用は増加しているので,人員は相対的にも減少している.利用増加に投入できる労働力の不足は,職員の生産性を向上させることが唯一の解決策である.個人の能力を開発するか,安い賃金の職員を採用するか,業務によってその辺を使い分けることも必要になってきている.

 機能拡大に比べて館員の質的低下もある.情報通信環境の充実に比べてコンピュータ・情報リテラシー研修の遅れにより,相対的な能力低下が生じている.これを防止するには,管理者側からの全面的支援による職員研修が不可欠である.また,設置母体内の図書館以外の部門との人事交流の促進により,さらに現場研修の必要性は増している.

 「決められた収入を配分して運営を行う」だけの従来型の組織は,組織疲労を起こしている.組織の環境への不適応による非効率的な図書館運営の再編と職員の意識改革が重要な課題である.人員と予算の効率的運営のために,図書館の使命を明確にし,資源(人・金)をある方向,ある対象,ある地域に集中する一点集中の方法を採用することもこれからは必要である.

 以上から,限られた資源で生産性を向上させるため,図書館においても営利組織的な経営感覚が必要になってきていることがわかる.


2.存在基盤の強化 

2−1.存在基盤の状況 

 図書館は,組織内での存在基盤の強化・再構築という課題に直面している.図書館は,設置母体の生産性に間接的にしか貢献していない.所詮,情報や資料の提供という形態の図書館サービスは,他の社会教育施設と同様に,通常は設置母体の生産性に直接的な貢献はできない.にもかかわらず,図書館は,設置母体のなかでかなりの予算を使って独自の活動を行っている存在である.そのような図書館が,設置母体が認めるほどの費用にみあった成果を上げることができない場合には,図書館サービス自体が資源の浪費とみなされる危険性も否定できない.逆に,図書館の経済効果を前面に出し,図書館の存在基盤の強化に成功している例もある◆12)-14)

 ◆(表1)は,大学図書館における一校当たりの大学総経費と図書館総経費の比較である.大学図書館においては,図書館経費は総額として増加している.しかし,図書館経費の大学総経費に占める割合は縮小している.大学経費の伸びに図書館経費の伸びが追いついていない状況からは,大学における図書館の位置づけの低下傾向がうかがえる.コンピュータ化,ネットワーク化への投資が増加して,資料費の割合が減少し,運営費の割合が増加している状況もあり,今後の図書館のサービス戦略と経費配分のバランスを検討する必要もでてきている.

◆(表2)は,地方財政における普通会計歳出および社会教育費と図書館費の比較である.公共図書館においても図書館費の総額としての大幅な増加がみられる.年間数十館にも及ぶ新館建設が総額の増加に大きく貢献している.それ故に,図書館市場自体は拡大傾向にあるといえる.図書館費の社会教育費に占める割合も増加しており,図書館の自治体内での地位向上も伺える.しかし,個別館レベルで見ると,元気な活動を続ける館◆15)-17)が全体額を引き上げている裏側で,予算の減額している図書館が多数存在している◆18)

(表1:大学図書館:大学総経費と図書館総経費[一校当たり])

【『文部省大学図書館実態調査報告』より作成】
 
(千円)
'80(S55)
'85(S60)
'90(H2) 
'95(H7) 
'96(H8) 
国立 a.大学数(校)
92
95
96
98
98
b.大学総経費
10,520,157
13,274,478
15,595,666
19,515,870
19,511,032
c.図書館総経費
352,565
395,387
446,772
470,756
480,973
c/b
3.35%
2.98%
2.86%
2.41%
2.47%
私立 a.大学数(校)
318
331
372
415
425
b.大学総経費
3,361,462
5,083,302
5,762,492
6,195,983
6,242,167
c.図書館総経費
148,144
207,732
249,943
265,701
266,174
c/b
4.41%
4.09%
4.34%
4.29%
4.26%
 

(表2:公共図書館:地方財政普通会計歳出,地方財政社会教育費と図書館費[全国合計])

【『文部統計要覧』『日本統計年鑑』『日本の統計』より作成】
 
(館数'84)
(館数'93)
(館数'96)
(億円)
'81(S56)
'85(S60)
'90(H2)
'94(H6)
'95(H7)
a.図書館数(館)
80
69
70
66
66
b.本館数(館)
60
59
55
56
55
c.職員数(人)
2,033
2,009
1,913
1,928
1,934
d.普通会計歳出
263,720
304,310
428,880
501,450
528,235
e.社会教育費
1,550
1,944
3,147
4,825
5,208
f.図書館費
193
236
351
606
502
f/d
0.07%
0.08%
0.08%
0.12%
0.10%
a.図書館数(館)
1,319
1,541
1,844
2,070
2,292
b.本館数(館)
1,020
1,175
1,384
1,517
1,701
c.職員数(人)
7,803
8,928
11,031
12,380
13,680
d.普通会計歳出
260,610
294,740
412,280
505,570
533,033
e.社会教育費
8,958
10,312
17,190
22,279
22,817
f.図書館費
957
1,198
2,213
2,895
3,004
f/d
0.37%
0.41%
0.54%
0.57%
0.56%
 

 地方財政の危機◆19)のなかにあって,図書館は他の文化・教育施設(公民館,博物館,体育施設,青少年教育施設,婦人教育会館,文化会館,文化財保護など)と比較して健闘している.しかし,個々の館の状況は,設置母体の財政状況,設置母体の図書館への理解度,図書館自体の抱える資源の充実度などにより様々である◆20)-21)

2−2.設置母体の求める図書館とその運営 

 大学の教育方針は図書館の運営方針に大きく影響する.大学改革の方向には,入口規制型,出口規制型,大衆化受容型の3タイプがある.大学審議会「中間まとめ」◆22)では,「卒業時における質の確保を重視したシステムへの転換が必要」として,出口規制型のようにみえる.しかし,少子化が続くなかでは,多くの大学は,個人の個性を尊重し,個々の学生の付加価値をいかに高めるかに重点を置く大衆化受容型に転換せざるをえないだろう.大学が大衆化受容型に転換するならば,大学は卒業生のその後の教育にもある程度関わる必要がでてくるだろう.生涯教育◆23)という場面で,大学図書館と公共図書館の戦略的な協力関係がクローズアップされることもあるだろう.

 「大学設置基準の大綱化」「大学の自己点検評価」の動きと並行して,大学図書館では図書館機能の強化・高度化◆24)-26)に対応し,電子図書館の方向に進んでいる.

 大学設置基準の大綱化◆27),電子化,規制緩和,地方分権化の流れのなかで,図書館の選択できる道は複雑になってきている.

 公共図書館においては,文部省生涯学習審議会「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について(生涯学習審議会(答申))◆28)により,館長資格の撤廃,無料公開原則の修正,業務委託など,図書館運営における設置母体の意向が強く反映される状況に変化しつつある◆29)-34)

2−3.利用者の求める図書館とその運営 

 利用者の立場による的を得た報告◆35)がある.ここでは,リーディングルーム(図書閲覧室)の貧弱が指摘され,図書館の建物としての機能を求めている.また,図書館が本の運命(たとえば本の電子化)◆36)にあまりにも関心を持たずにいるようにみえるとして,本の持つ多様性を維持し続ける責任を,図書館が惰性的に放棄してしまおうとしている危険性も指摘されている.さらに,新しい市民図書館像を固めて,それを積極的に外の世界にアピールしてゆかないと,地域の図書館は,国や行政の冷酷なあしらいから身を守ることすらできなくなってしまう,と図書館運営に関する分析も行われている.津野氏の,貸出図書館という看板のかげで一切合切が何となく中途半端に処理されてしまっているという意見は,根本氏による日本の戦後公共図書館の歴史◆37)からも納得できる.利用者からの指摘を真摯に受け止めて,利用者の求める方向に図書館は変わっていくべきである◆38)

「すでに定まった質問や目的や要求に対応する技術ではなく,対話的な出来事のなかで生起し浮上し変化する何ものかを発見し,時にはミスやエラーをも許容し織り込みながら,資料提供への回路を見いだしていく想像力を専門性と呼んでみるなら,そこにはもはや対象の大人・子供の区別はないといってよい.また,その想像力はカウンターの向こう側を往来する,あらたまった資料相談などおそらく生涯に一度たりとも試みることのないような多くの無言の来館者一人一人との暗黙の交信を可能にさせ,さらに一冊一冊の「選書」という行為にも及んでいくにちがいない」◆39)という指摘にあるとおり,図書館員の想像力に磨きがかかれば利用者の潜在需要をつかむことは可能である.


3.アイデンティティーの確立 

3−1.図書館と利用者との関係 

 先の「1.拡大と縮小」で述べたように,資源不足の時代においては,図書館自身が自分は何をしたいのかをはっきりと設置母体や利用者に説明しなければ,両者から協力を得ることはできない.設置母体の求める図書館,利用者の求める図書館,それに図書館員の求める図書館の3つが図書館のアイデンティティーを考える上での要素である.アイデンティティーの確立は,図書館における重要な課題の一つである.限られた資源を,従来のように「決められた予算を配分し,運営を行っているだけ」の漫然とした組織の将来は暗い.「力を一点に集中して,あるものを立ち上げた後,今度は全体としてのレベルアップを図る」など,資源の有効活用が必要とされる.以下の5点を明確に出来ない組織の将来は危うい.

  a)何をする組織なのか (使命)

  b)誰を相手にするのか (顧客)

  c)何を期待されているのか (要求)

  d)成果・生産物は何なのか (成果)

  e)何が出来るのか (資源・計画)

 図書館は図書館資料を住民や学生に無料で提供する.この図書館機能は,税金や授業料の還元であり,利用者にとっては当然の権利である.しかし,サービス提供の窓口と,料金徴収の窓口が異なるだけで,利用者は図書館サービスにたいしてある代価を支払っており,図書館は有料のサービスを提供している.図書館自身の立場を対外的に明快にするためにも,「価値のないものには料金を払わない」「価値のあるサービスは高く売れる」など,利用者と図書館の間の「経済行為」が存在することを認識すべきである.

3−2.カシオの戦略 

 カシオの歴史◆40)によれば,1946年4月に設立された「樫尾製作所」は航空機部品のメーカーであったが,トランジスタを使用した1965年9月のデスクの上に載るサイズの”電子式卓上計算機”からさらに小型化を進め”電卓”を開発した.電卓は,簡単な買い物の計算から複雑な科学計算まで,計算という機能を誰もが簡単に行うことを可能にして,「低価格化技術」により生活必需品になっている.1974年11月には,デジタルウオッチ”カシオトロン”を発売し,電子楽器,デジタルカメラ,ハンドヘルドコンピュータなどのデジタル分野に様々な商品を送り出している.これらはすべて計算機開発のための「デジタル技術」「小型化技術」の応用である.デジタルウオッチには”落としても壊れない時計”という新しいコンセプトが追加され,1983年に「G-SHOCK」◆41)が開発された.デジタルウオッチの歴史は,精密機械産業への「異業種参入」,デジタル技術の応用による時を計る「機能の高度化」,新製品開発による「市場創出」の歴史である.カシオはアイデンティティーを変容させ現在の発展を築いたといえる◆42)

3−3.紙と電子のミックス 

 情報の電子化は,図書館機能を拡大し,図書館の存在基盤の強化を実現する梃子となる.図書館資料の幅が電子媒体で広がるならば,それを図書館サービスに積極的に取り込み,従来型の図書館とネットワークを用いた電子図書館をミックスした,新しいタイプの図書館を目指し,あらゆる情報媒体の提供を図書館の使命とすべきである.これが今後の図書館のアイデンティティーとなる.

 インターネットへの「ポータル」(入り口:portal)を目指して◆43),行政情報やカリキュラム,講義内容などの大学情報などへのアクセスを確保したり,電子ジャーナルにおけるアグリゲーションサービス,ワンストップショッピングを提供◆44)することは,図書館の新たな役割として対外的にも強力な武器となる.インターネットにより,職員の意識改革と利用者の意識改革が同時進行することも考えられる◆45)-46)

 また,紙の印刷物は電子媒体より強く◆47)一本調子の電子図書館への傾倒は考えものである.館(やかた)としての図書館と,セラピストとしての図書館員という方向◆48)-49)も相変わらず重要である.

 図書館が新しい時代に適応して電子化された情報を扱うようになればなる程,古くからある人類の知的文化遺産を保存し後世に伝えていくという従来の図書館の機能が重要になってくる.「電子化情報の流通」と「知的文化遺産の保存」は,図書館の重要な二つの機能である「コンテンツ(蓄積された情報)」と「流通手段」を代表しているのであり,転換期の図書館は,この二つの機能をどのようにバランスよく組み合わせて維持していくかが問われている◆50)


4.積極経営のすすめ 

4−1.図書館経営 

 従来型図書館と電子図書館をミックスした新しい図書館像の形成と,そのための経営戦略に関しては『中小レポート』◆51)とそれに関わる一連の論考◆52)-56)が参考になる.

 『中小レポート』を土台にして理論的な出発をした日野市立図書館は,「市民の自立を助けることが図書館の本質であるとの認識に立つ」「市民の抱いている図書館観を変えるために,図書館員自身を変革する」「図書館の変革を実行するために仕事をある方向,ある対象,ある地域に集中する一点集中の方法をとる」などの方向性を明確にした.さらに,図書館が提供する本の力,本が持っている人間に与える力,本の力を受けとめる市民の知的好奇心,向上心に頼って,理論を実践する課程において,図書館を担い,新しい理論をつくる人材をもつくっていった◆57)-58)

 電子や紙,コンピュータやネットワークという,媒体や手段が新しく追加されても,新しい運営パターンを作り上げるという点で,『中小レポート』から『市民の図書館』◆59)に至る手法は現在も有効である.

 96年8月の「図書館法施行規則の一部を改正する省令」により,司書の講習科目に図書館経営論が設けられた◆60).それに伴い従来からの大学図書館の経営論◆61)-64)に加えて新たな公共図書館の経営論◆65)-67)も発行されている.

4−2.とにかく行動を:「一太郎」の油断 

 存在基盤の強化とアイデンティティーの確立という2つの課題を解決するために,景気停滞,規制緩和,地方分権,少子化,インターネット,電子図書館などの時流を,図書館発展の好機ととらえて積極的な図書館経営を行っていきたい.お粗末な意志決定や間違った行動は修正することができても,失った機会を取り戻すことはできないので,とにかく行動を起こすことが肝心である◆68)

 ジャストシステム社(Just社)は,1997年7月に新社屋を完成し,同年10月に株式の店頭公開をしたにも関わらず,1998年3月期決算は赤字に転落した.マイクロソフト社(MS社)の「ワード」が「一太郎」のシェアを奪って,急速に拡大しているからである.ワープロソフトである「一太郎」は,Just社の売上高の8割を占める同社の主力商品である.1995年には「置けば売れる」という状況で,「一太郎」がワープロソフト市場の8割のシェアを占めていた.MS社は,世界市場でのデファクトスタンダードになっていた「ワード」と表計算ソフト「エクセル」の統合ソフトを日本市場に投入し,さらに,明確なリベート体系の導入によりMS社製品の販売意欲を刺激し,小売店の店頭での営業活動も活発に行ったため,MS社のシェア拡大に拍車がかかった.

 Just社の社名は,創業理念の「大きすぎず,小さすぎず,高すぎず,お客さんに一番満足してもらえる商品を」に由来する.しかし,百億円の本社ビルの建設など,業績の急成長によって,体力を上回る体制が組みあがってしまった.また,赤字転落をうけて,1998年春には社員のリストラが発表され,社員の志気への悪影響も懸念されている.「一太郎」神話崩壊の原因には,「ナンバーワンであったために地道なマーケティングを怠ってきた」「本社が徳島にあって市場の変化についていけなかった」「MS社を意識しすぎて機能の肥大化を招いた」などがあげられている.今後の課題として「営業力・マーケティング力の強化」「社員の志気向上」「Just社らしい研究開発体制の確立」などがあげられる.「人員・経費削減による損益分岐点の引き下げ」「成長事業への選別投資」などの再生策は,拡大路線への決別宣言である.累積出荷本数1200万本という資産を生かして,潜在需要を掘り起こすことが復活の鍵となっている◆69)-70)

 市民参加を力とした図書館づくり◆71)-73)からは,多くを学ぶことができるし,また,学ばなければならない.

4−3.生産性の向上 

(1)エラーの回避 

 製造業では,不良品率を下げることが生産性の向上につながる.一個の不良品のために十個の製品の販売による利益が消えてしまうことになる.図書館サービスでは,資料の探しにくい配置や資料自体を所蔵していないことよって,求める資料をすぐに提供できなかった場合,職員による客への応対の拙さや不適切な人員配置などによって,利用者が満足を得ることのできなかった場合がこれに相当する.

 図書館において良い商品の仕入れ(図書選択)は重要である◆74)-75).求められた資料が所蔵されていないのは大きな問題でるが,相互利用の発達によって,必要な資料を一つの館で全てそろえる必然性は薄れてきた.それだけに自館の資料で利用をまかなえる確率の高さは図書館の大きな評価ポイントとなるに違いない.

 不適切な人員配置による業務組織も問題である.熟練しても生産性がそれほど上がらない労働集約的な業務は自動化させることが得策である.付加価値の高い業務には,新人よりも熟練した職員を配置し,生産性の悪化につながる無用な館内外への異動は避けるべきである.適正な人員配置のための人事異動と,教育・研修による職員の能力開発による本来的な人事政策による職場の活性化は,生産性向上の大きな要因である.

 積極経営を推進し,それが軌道にのるまでの間は,失点をしない堅実な経営でエラーを回避しなければならない◆76)

(2)組織整備 

 資源不足の時代に成果を達成するには,生産性を向上させなければならない.サービス産業の生産性向上とは,一人当たりの売上高,売り場面積当たりの売上高を増加させることである.図書館の売上げは,貸出冊数や顧客の満足度である.組織の再編成と評価◆77)-86)も必要になる.定量的な達成度を測ることは可能であるが,顧客の満足度などの定性的な評価指標は今後の整備が待たれる.

 生産性向上には4つのパターンがある.

  a)売上拡大:現在の人員,経費のまま,売上げを増加させる,

  b)経費節減:売上げを落とさず,人員,経費を節減させる,

  c)経営拡大:人員,経費を拡大し,売上げをそれ以上に増加させる,

  d)効率経営:人員,経費を節減し,さらに売上げを増加させる.

設置母体は「2)経費節減」を選択しようとしている.利用者にとっては「3)経営拡大」がベストである.図書館は「1)売上拡大」に傾いているようである.コンソーシアム◆87)-88)などにより電子雑誌やDBを共同利用することがこのパターンになる.また,売上げ,人員,経費も据置のまま第5の選択肢としての「現状維持」としかみえない運営を行っている館も多い.私立大学では,学生獲得戦略としてのアメニティ向上に力を入れた結果,教育サービスの向上に直接結びつかない過剰な固定資産投資が行われており,有形固定資産投資の水準が高くなっている大学も多い◆89).この場合は,経費が増大するだけで売上げに貢献しない「非効率経営」ということになる.しかし,図書館では,設置母体の財政状況と利用者の願望を両方満たすことのできるもっとも困難な「4)効率経営」を目指すことを目標に掲げ,対外的にアピールすべきである.国立大学や地方自治体をはじめとした定員削減が続く組織においては,このパターンが唯一の選択肢になる.

 受付窓口や一般デスクワークなどの,専門的知識やスキルを必要としない一般事務職のカテゴリーは,嘱託・アルバイト・アウトソーシングでの代替を考える.今後,大学職員は「行政管理職」と「専門職」に二局分化していく運命にある◆90)との指摘もある.図書館の業務の二局化◆91)への対応を考える必要がある.過去においても図書館の業務分析◆92)-93)はなされているが,組織の再編成の際に,エラーを生じない組織に改善することが肝心である.

(3)業務整備 

 図書館はサービス業のようであるが,労働集約的な業務が多く,多額の設備投資を必要とすることから,製造業とも多くの共通点が見いだせる.図書館の経営管理においては,人員と施設・設備の有効活用による効率経営を目指すことが必要である.

 図書館では図書関係費の相当な部分をかけて運用してシステム化が進行している.このコンピュータ,LANをフルに活用して,図書館の資源の運用効率を上げることが必要である.カード目録が消滅してOPACに変換されるなど,電子化しやすいものはどんどん媒体変換されていく.コンピュータ化による業務の合理化,オンライン検索やCD-ROM等の新しいメディアの導入による図書館サービスの高度化は,図書館の生産性を向上させ一定の成果を達成してきた.これまでは,特に経営的な問題を考慮しないでも事態は前進してきたが,今後は経営的な手法を用いてさらに生産効率を上げなければ,設置母体を納得させることはできない.

(4)マルチソーシング 

 図書館・情報関連の業者では,アウトソーシング(外部委託)や自動化による図書館業務の合理化提案◆94)を積極的に行っている.発注・受入業務,目録・装備業務,夜間開館◆95),自動貸出◆96),電子図書館,外国雑誌業務はすでにアウトソーシング可能な状況に到達している.

 佐々木氏は,図書館におけるひとつひとつの業務ボリュームの大きくない多種多様な業務は「むしろ,業務プロセス全体のなかで,必要はスキルを積極的に外部から取り入れて,業務プロセスの質を低コストで高めていく」マルチソーシング(共同運営)に適していると提案◆97)している.同様にアウトソーシングを共生進化ととらえる考え◆98)もある.

(5)人員整備:能力開発 

 公共図書館では「通年開館と職員不足により,労働条件が悪化して,短期間のうちに人が入れ替わり経験の蓄積が出来ない事態となっている.不規則勤務は,職員間の意志疎通やミーティングの機会をも減らしていく.仕事の核となるべき職員が減り,知識や経験の伝達の場が減少してゆくなかで,職員集団の力量が高まることはない」
◆99),同様に大学図書館における人事異動や職員の削減◆100)も大きな問題となっている.

 積極経営を行うには,リーダーシップ◆101)-102)と,それに応える現場の職員の能力強化が不可欠である.縮小する経営資源(人と経費)によって拡大するサービスに対応しなければならない状況では,人的資源に負担がかからざるを得ない.それ故,図書館に限らず一般に,部下は上司のリーダーシップ不足を嘆き,上司は部下の能力のなさに悩まされ,お互いに責任を転嫁しがちである.内部的な対立が表面化しないうちに,早急な職員の能力開発が必要である◆103)-105).人事異動や人材育成プログラムの欠如による中間マネージャーや中間リーダーの不在も,積極経営の深刻な障害となっている.


おわりに 

 図書館サービスが拡大し,図書館の人員と予算が不足する状況では,図書館の使命を明確にし,利用者の指示を背景にして,設置母体に向かって図書館の存在を効果的にアピールすることが重要になる.そのためにはひとりひとりの図書館員の能力強化が必要になる.管理職も現場職員もすべての図書館員が目的意識をもって「図書館経営における課題」に取り組まなければならない.末尾の文献リストがそのための一助となることを願っている.

 また,課題の解決には,個々の図書館(員)の努力だけでなく,他館種とも協力した取り組みが望まれる.公共図書館の取り組みは,大学図書館員の視点を広げてくれる.大学図書館の事例も公共図書館の役に立つはずである.日本図書館協会で活動中の「学校図書館問題プロジェクトチーム」「図書館の基準のあり方を検討するワーキンググループ」「専門性の確立と強化を目指す研修事業検討ワーキンググループ」等の成果をもとに活発な議論がなされ,何よりも個々の図書館でそれぞれに具体的な取り組みが開始されることを期待している.


参考文献 

1)不況の逆風下上場166社,最高益を更新. 日本経済新聞. 1998.10.22朝刊, p.3

2)安さより「欲しくなる」ものを:ソニー・出井伸之社長語る. In. 東京ニュース[online]. 1998年8月20日 [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.tokyo-np.co.jp/news/1998082012.html>

3)神奈川県高等学校教職員組合図書館教育小委員会編著. 図書館よ、ひらけ!:授業いきいき学校図書館. 公人社, 1990.8, 306p.

4)全国学校図書館協議会アメリカ・カナダ図書館視察団編. マルチメディア化が進む学校図書館:アメリカ・カナダの学校図書館を訪ねて. 全国学校図書館協議会, 1996.9, 211p.

5)アメリカ・スク−ル・ライブラリアン協会, 教育コミュニケ−ション工学協会共編 ; 全国学校図書館協議会海外資料委員会訳. インフォメ−ション・パワ−:学校図書館メディア・プログラムのガイドライン. 全国学校図書館協議会, 1989.12, 217p.

6)M.K.バックランド著, 高山正也訳. 図書館サービスの再構築. 勁草書房, 1994.7, 129p.

7)パトリシア・セン・ブレイビク, E. ゴードン・ギー著 ; 三浦逸雄, 宮部頼子, 斎藤泰則訳. 情報を使う力:大学と図書館の改革. 勁草書房, 1995.1, 258p.

8)八木清江, 高橋清一著. 公立学校図書館職員の現在:その配置状況と雇用実態(シリーズ図書館員の問題 ; 1). 日本図書館協会, 1993.7, 138p.

9)悦子・ウィルソン著 ; 小川俊彦編. サンフランシスコ公共図書館:限りない挑戦. 日本図書館協会, 1995.12, 207p.

10)リーパー・すみ子著. ライブラリアン奮闘記:人種のるつぼ、アメリカの学校で. 径書房, 1996.9, 233p. 書評:In. 図書館の本と事件. [online]. [引用:1998.9.20]. 入手先:<http://www.slis.mita.keio.ac.jp/~ueda/libraries1.html>

11)国立大学図書館協議会身体障害者サービスに関する調査研究班. 大学図書館における身体障害者サービスの実態. [online]. 国立大学図書館協議会 [引用:1998.09.20]. 入手先:1997.6<http://ginkaku.lib.u-tokyo.ac.jp/kokutokyo/index.html>

12)竹内紀吉著. 図書館の街・浦安:新任館長奮戦記. 未来社, 1985.6, 227p.

13)竹内紀吉著. 浦安の図書館と共に. 未来社, 1989, 231p.

14)竹内紀吉. 地方自治体における図書館経営の経済効果(情報の経済<特集>). 情報の科学と技術. Vol.44, no.5, p.270-273 (1994.5)

 「一般会計予算の1.3%〜1.4%の図書館予算と,司書資格者85%により,浦安では図書館が大きな行政効果を上げている.市区では1%,町村では0.7%の予算を経常経費として費やすと図書館は理想的に育つといわれている.貸出冊数を本の金額に換算すると35億円になり,図書館予算の5億円の差し引いて,30億円の利益になる.貸出などと同様に,職員各人の仕事量の多さも全国有数である」

 「臨海点に届く予算措置と目的意識に貫かれた専門職員を配置してサービスに臨んだ図書館は,どこもみな高い経済効果を上げている.こういった効果に目覚めていない自治体が多く,こうした自治体に限って国の行政改革の指導を図書館に及ぼし,運営の委託化や人材派遣会社からの職員配置を行っている.元々必要な予算を投入しなかった機関を対象にして,経費節減や合理化の効果が生み出せるはずはないのにそれをあえて行おうとする.安物買いの銭失いというもっとも不経済な結果を招くことは目に見えている」

 「自治体にとって,図書館行政に力を注ぐことは実は非常に確実,かつ経済的な公共投資に外ならない.地域社会の全市民を日常生活のレベルでサービス対象に包括できる無限定性は,図書館以外にはそれほど多く考えられない.生涯学習の要請に応えている図書館は,数は少なくとも実はとっくの昔から各地に存在しているのである」

15)大澤正雄. 予算獲得に図書館は何をなすべきか--鶴ヶ島市立図書館の試み(特集:図書館資料費削減問題を考える). 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.459-461 (1998.6)

16)澤谷とし子. 住民の声に支えられて--人口1万人未満の町立図書館の場合(特集:図書館資料費削減問題を考える). 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.462-463 (1998.6)

17)岩田教子. 資料費予算維持のための努力--半田市立図書館における実践(特集:図書館資料費削減問題を考える). 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.464-465 (1998.6)

18)編集委員会. 特集に当たって(特集:図書館資料費削減問題を考える). 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.454 (1998.6)

19)関野満夫. 危機の地方財政(特集:図書館資料費削減問題を考える). 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.455-458 (1998.6)

20)山家篤夫. 読者を減らす司書なし図書館:東京23区・司書職廃止への反対運動レポート. 新文化. No.2247, p.1 (1998.2.12)

21)松岡要. 資料・地方交付税のなかの図書館経費について. みんなの図書館. No.256, p.80-84 (1998.8)

22)大学審議会. 21世紀の大学像と今後の改革方策について:競争的環境の中で個性が輝く大学(中間まとめ)(平成10年6月30日). [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.monbu.go.jp/singi/daigaku/00000253/>

23)高鳥正夫; 館昭編. 短大ファーストステージ論. 東信堂より刊行予定

 短大を生涯学習社会で「学び方を学ぶ」第一段階と位置づけ,短大の新たな存在意義を追求する.

24)学術審議会. 今後における学術情報システムの在り方について(答申)(1980年1月)[大学図書館研究. No.16, p.57-66 (1980.5)に再録]

 この答申以降大学図書館は,学術情報システムの構成要素として位置づけられ,コンピュータ化,ネットワーク化へと基本的な方向が設定された.

25)学術審議会学術情報資料分科会学術情報部会. 大学図書館機能の強化・高度化の推進について(報告). 平成5年12月16日, 28p. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/anul/houkoku.html>

26)学術審議会. 大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について(建議). 平成8年7月29日, 21p. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/anul/kengi.html>

27)森茜. 転換期における大学図書館の管理と運営. 大学図書館研究. No.50, p.6-13 (1996.10)

 平成3年の「大学設置基準」の大綱化により,大学図書館という建物,備えるべき設備としての図書資料の数量,閲覧席の数量等のみの規定が大綱化され,そこに機能面の規定が追加され,大学における図書館の位置が明確になった.それゆえ,大学図書館員には,絶えず大学自体の現状と課題を認識し,大学の変化に呼応して,あるいはそれを先取りして図書館を運営する気構えが必要になる.

  a)大学は,図書,学術雑誌,視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を図書館が中心になって系統的に備えること.

  b)図書館はそれらの資料の収集・整理・提供を行う他,情報の処理・提供のシステムを整備して学術情報の提供につとめ,他大学の図書館などとの協力に努めるべきこと.

  c)そのための専門的な職員その他の職員を置かねばならないこと.

  d)大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室,レファレンス・ルーム,整理室,書庫等を備えること.

  e)閲覧室には,学生の学習および教員の研究のための十分な数の座席を備えること.

28)文部省生涯学習審議会「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について(生涯学習審議会(答申))」(1998.9). [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.monbu.go.jp/singi/syogai/00000217/>

29)塩見昇. 公立図書館経営の動向--効率,委託運営,司書の問題を中心に(「変革期」に立ち向かう図書館<特集>). 図書館界. Vol.47, no.3, p.148-154 (1995.9)

30)江藤俊昭ほか. 地方分権と図書館. 図書館を考える勉強会, 1997.7, 87p.

31)山口源治郎. 問われる図書館の自由と公共性--文部省生涯学習審議会「中間まとめ」を読む. 図書館雑誌. Vol.92, No.6, p.473-475 (1998.6)

32)松岡要. 図書館員と地方分権(特集:戦う図書館員). 情報の科学と技術. Vol.48, no.9, p.506-510 (1998.7)

 「地方分権化推進計画による,図書館法の改正により,脆弱な図書館の職員体制がさらに困難な状況になろうとしている.配転などの公務員の人事管理方針に対抗するために,図書館の機能を生かした積極的な提起が必要である」

33)公立図書館の設置及び運営に関する基準について(報告)<平成4年5月21日>(資料). 図書館雑誌. Vol.86, no.7, p.441-444 (1992.7)

34)中洌正堯. 学びの変革と学校図書館の変革(特集 学習・情報センタ-としての学校図書館の活用). 初等教育資料. No.679, p.6-11 (1997.12)

35)津野海太郎. 市民図書館という理想のゆくえ. 図書館雑誌. Vol.92, no.5, p.336-338 (1998.5)

36)津野海太郎. パブリッシングはどこを目指すのか?目指すべきなのか?. In. デジタルで変わるメディアビジネス. エムディーエヌコーポレーション, 1998.6, p.281-297 (1998.6)

37)根本彰. 地域社会と公共図書館--地方分権の論理を超えて--. [online]. [引用:1998.1.4]. 入手先:<http://wolverine.p.u-tokyo.ac.jp/text/tama/tama.html>

 日本の戦後公共図書館の歴史についての論考.

 「貸出やレファレンスなどの基本的な業務が確立する前にコンピュータ化が進展して,確立したサービスのある部分を効率化するという形で展開できなかった.そのため貸出以外へのサービスを広げることができなかった」

38)アウトソーシング(4):図書館とは何か (1):津野海太郎「市民図書館という理想のゆくえ」. [online]. In.図書館員のためのインターネット. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www2d.biglobe.ne.jp/~st886ngw/outsource/os3-.htm#bm980818>

39)川島勉. ある日の横須賀”図書館”ストーリー. みんなの図書館. No.253, p.21-28 (1998.5)

40)カシオの歴史. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.casio.co.jp/company/history/j_history.htm>

41)G-SHOCK. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.casio.co.jp/ww/G-SHOCK/>

42)図書館のアウトソーシング(2):カシオ計算機株式会社と図書館の死. [online]. In.図書館員のためのインターネット[引用:1998.09.20] <http://www2d.biglobe.ne.jp/~st886ngw/outsource/os2.htm>

43)インターネットの入り口奪え「ポータル」目指し大競争. 日経マルチメディア. 1998年9月号, p.66-71 (1998.9)

44)尾城孝一; 細川真紀. 大学図書館における電子ジャーナルの利用と問題点. 医学図書館. Vol.45, no.2, p.201-210 (1998)

45)岡部一明著. インターネット市民革命 : 情報化社会・アメリカ編. 御茶の水書房 , 1996.5, 366p.

46)岡部一明. 情報化時代に市民アクセスを保証する図書館--カリフォルニア大学図書館,サンフランシスコ市立中央図書館(特集 情報化意識の変革--地域,市民レベルの情報化). 情報の科学と技術. Vol.47, no.3, p136-143 (1997.3)

47)上田修一. 紙の印刷物は電子媒体より強い--紙の現在と電子図書館への疑問. 現代の図書館. Vol.36, No.1, p.3-8 (1998.3)

48)ウィリアム F. バーゾール著 ; 根本彰 [ほか] 訳. 電子図書館の神話. 勁草書房 , 1996.4, 254p (The myth of the electronic library : librarianship and social change in America の翻訳)

49)根本彰. 図書館研究への儀式的アプローチ--バーゾール『電子図書館の神話』の意義. 図書館界. Vol.48, no.5, p.442-452 (1997.1)

50)開原成允. 転換期の大学図書館. 大学図書館研究. No.50, p.1-5 (1996.10)

51)中小都市における公共図書館の運営: 中小公共図書館運営基準委員会報告. 復刻版. 日本図書館協会, 1973.3, 217p.

52)前川恒雄. われらの図書館. 筑摩書房, 1987.4, 246p

53)前川恒雄著. 移動図書館ひまわり号. 筑摩書房, 1988.4, 218p

54)関千枝子著. 図書館の誕生:ドキュメント日野市立図書館の20年. 日本図書館協会, 1986.4, 193p

55)森智彦. 日野市立図書館の成立・発展と都市化. 東横学園女子短期大学紀要Vol.31, p.65-77 (1996.11)

 ここでは以下の二点が明らかにされている.

 「団体貸出より個人貸出を重視し,移動図書館車で全域サービスを開始した日野市立図書館のサービスを,積極的に受け入れた日野の住民がどのような人たちであったか」

 「『中小都市における公共図書館の運営』(通称『中小レポート』1963年3月)を発展させた『市民の図書館』(1970年5月)が刊行されたが,『中小レポート』の矛盾点の整理,発展に日野市市民の図書館利用がどのような影響を与えたか」

56)前川恒雄;山口源治郎(インタビュ-). 現代公立図書館の課題と中小レポ-トの思想--前川恒雄さんに聞く. 図書館界. 46(5) 1995.1 p.190-211

57)前川恒雄. 状況から明日(あす)へ. 図書館史研究. No.12, p.19-36 (1995)

 「図書館の経費は昔とは桁違いに多いので,「図書館はやりすぎだ」との意見も出る.国の行政改革の方針も影響する」

 「サービスの量,サービスの内容,所蔵資料の差,職員の意識の差など,図書館間の格差が存在する.たとえば,利用者の表情や読書の喜びに気づかず,「こんな本がないのか」といわれても恥ずかしいと思わない図書館もある【鈴木喜久一. いま図書館に思うこと. 出版ニュース. 1994年9月下旬号】」

58)オーラルヒストリー研究会編. 『中小図書館における公共図書館の運営』の成立とその時代. 日本図書館協会, 1998.3, 386p.

 中小レポートの関係者からのインタビューで構成されている.「中小レポートは若手図書館員の組織化と普及運動とを内に含むことによって,その実現化の担い手を同時に作り出していった」と,解説では結んでいる.

59)日本図書館協会編. 市民の図書館. 増補版. 日本図書館協会, 1976.5, 168p

60)志保田務; 西田文男. 「図書館経営論」の検討. 図書館界. Vol.50, No.2, p.92-98 (1998.7)

61)岩猿敏生著. 大学図書館. 雄山閣出版, 1976.2, 295p

62)高鳥正夫著. 大学図書館の運営. 勁草書房, 1985.4, 193p.

63)岩猿敏生, 大城善盛, 浅野次郎著. 大学図書館の管理と運営. 日本図書館協会, 1992.4, 247p.

64)高山正也編. 図書館・情報センターの経営. 勁草書房, 1994.1, 282p

65)高山正也ほか. 図書館経営論. 樹村房, 1997.9, 184p.

 執筆者に研究者が多く「理論的」な内容.

66)竹内紀吉編著. 図書館経営論. 東京書籍, 1998.2, 223p.

 執筆者に図書館の現職者や経験者が多く,いくらか「実践的」な内容.

67)糸賀雅児編著. 図書館経営論. 日本図書館協会より刊行予定

68)中桐有道著. 「ゆでガエル現象」が会社を潰す:マンネリになっていないかマーケティングとマネージメント. 工業調査会, 1992.2, 209p.

69)「一太郎」神話崩れ再建急務. 日経流通新聞. 1998年5月7日号 詳細は最後にあり

70)アウトソーシング(3):一太郎の油断とワードの大躍進は対岸の火事か. [online]. In.図書館員のためのインターネット. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www2d.biglobe.ne.jp/~st886ngw/outsource/os3-.htm#bm980815>

71)山本宣親著. 図書館づくり奮戦記:本と人・人と人が出会う場所をめざして. 日外アソシエーツ, 1996.10, 224p.  書評:In. 図書館の本と事件. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.slis.mita.keio.ac.jp/~ueda/libraries1.html>

72)山本宣親. 自治体職員としての図書館員--明日を拓く図書館員に求められるもの. みんなの図書館. No.253, p.57-64 (1998.5)

73)山本宣親. 利用者の声をキャッチする「投書箱」. 図書館雑誌. Vol.92, no.4, p.283-285 (1998.4)

 開館時間延長を求める市民の要求にたいして,何もせず手をこまねいていると図書館の実態にそぐわない無理な開館時間延長の決定が,現場を無視して出てこないとも限らないので,館内に検討委員会を設置して,調査・検討を開始し,週二回の時間延長を試行し,利用者の支持を得た例や,マナー改善の例を紹介.

74)前川恒雄. 図書選択論の基礎. 図書館界. 46(3) 1994.9 p.118-120

75)前川恒雄. 図書館理論形成の方法--図書選択論を中心に. 図書館界. Vol.49, no.1, p.12-15 (1997.5)

 「図書の価値をはかることは,ほとんど人間の価値をはかることと異ならないと考える.だから一見科学的客観的で精緻にみえる尺度ほど,真の価値から遠ざかるように思える」

76)長谷川豊祐. 閲覧業務の蓄積と展開. 図書館雑誌. Vol.85, no.11, p.741-743 (1991.11)

77)日本図書館協会図書館政策特別委員会編. 公立図書館の任務と目標:解説. 増補版. 日本図書館協会, 1995.6, 85p

78)県立図書館の役割と実践:都道府県立図書館の実践事例集. 文部省 , [1994], 157p.

79)大串夏身. 図書館サービスの利用と評価:自治体の223の住民意識調査を中心に. 青弓社, 1989, 214p.

80)大串夏身. 図書館経営・サ−ビスをめぐる諸問題:379市区町村の事例を中心に. 青弓社, 1987.6, 270p.

81)日本図書館協会図書館運営に関する基本問題検討委員会編. 図書館運営のあり方を考える:ゆたかな暮らしをつくる図書館:シンポジウムの記録. 日本図書館協会, 1996.3, 174p.

82)ジャック・ゴーマン著; 佐々木一芳訳. ゴーマンレポート:アメリカの大学及び世界の主要大学格付け. アイ・エル・エス出版; 星雲社(発売), 1998.8, 327p.

83)大学基準協会編. 大学の自己点検・評価の手引き. 大学基準協会, 1992.5, 86p.

84)新私立大学図書館改善要項. 私立大学図書館協会, 1996, 7p.

85)国立大学図書館協議会自己評価基準検討委員会. 国立大学図書館における自己点検・評価について--よりよき実施に向けての提言(平成5年3月). [online]. 国立大学図書館協議会 [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://ginkaku.lib.u-tokyo.ac.jp/kokutokyo/index.html>

86)特集:図書館の統計と規格--ISO図書館パフォーマンス. 現代の図書館. Vol.34, no.3 (1998.9) 刊行予定

87)特集:ライブラリーコンソーシアム. 情報の科学と技術. Vol.47, No.11 (1997.11)

88)九州地区国立大学図書館協議会電子化推進連絡会議地域共同サーバワーキンググループ. 地域共同サーバWG報告書:地域共同サーバによるデータベース共同利用実験. 平成10年8月, 25p. [online]. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.lib.kyushu-u.ac.jp/kyogikai/wos.htm>. PDF形式.

89)梅田守彦. 私大財政の現状分析のために. 大学と教育. No.22, p.39-54 (1998.1)

 学生獲得戦略としてのアメニティ向上に力を入れた結果,教育サービスの向上に直接結びつかない過剰な固定資産投資が行われていると結論づけられている.

90)孫福弘(慶應義塾理事・塾監局長). 大学経営のイノベーション. 大学と教育. No.22, p.28-38 (1998.1)

 「学内の複雑な手続きで意志決定に時間がかかること,効果的な意志決定がなされにくいこと,経営・管理が有効に機能していなくて,事実上経営者不在の無責任体制に近いケースも少なくないこと,甘い経営体質などが,企業世界からの批判の中心である」

 「一般社会の抱いている大学のイメージは,教育に空洞化が起こっているらしいこと,社会の動向から遊離していること,官僚的で顧客サービス志向が欠如していることなどである」

 「エリート型,マス型,ユニバーサル型への大学の段階的移行により,大学組織の肥大化,目標や機能の多元化・多様化が進行し,組織機構の管理運営は教員による素人自治集団の手に余るようになってしまった.従来の「教育職員=教員」「事務職員=職員」に加えて,「行政管理職員」を設け,「行政管理職員」には教員,職員から能力・適正に応じて任用する」

91)杉山誠司. 図書館員の専門性の証明. みんなの図書館. No.253, p.45-54 (1998.5)

92)全国国立大学図書館長会議編. 大学図書館の業務分析. 日本図書館協会, 1968.6, 209p.

93)大庭一郎. 『大学図書館の業務分析』--日本の大学図書館における専門的職務と非専門的職務の分離の試み. 図書館学会年報. Vol.44, no.1, p.32-74 (1998.3)

94)図書館業務のアウトソーシングに関するご提案. 11p. (1997) [紀伊國屋書店からの提案書]

 発注・受入業務,目録・装備業務,自動貸出,電子図書館,外国雑誌業務の5業務の合理化を提案.

95)大里外誉郎. 医学部図書館の無人化管理システムの問題点. 医学のあゆみ. Vol.164, no.8, p615-617 (1993.2.20)

96)植松貞夫. 北欧の公共図書館における貸出返却のセルフサービス化. [online]. 図書館情報大学附属図書館報. Vol.13, No.2, 1997. [引用:1998.09.20]. 入手先:<http://www.ulis.ac.jp/library/Kanpo/Vol13No2/uematsu.html>.

97)佐々木克彦. 企業図書館とアウトソーシング. 情報の科学と技術. Vol.47, No.5, p.238-244 (1997.5)

98)西口敏宏. 共生進化戦略によるアウトソーシング. 公正取引. No.549, p.47-57 (1996.7)

99)松岡要; 石塚久芳. 委託経営の考察--その制度と実態. 現代の図書館. Vol.26, No.1, p.34-40 (1988.3)

100)森智彦. 「大学図書館実態調査」から見た大学図書館員の諸問題. In.日本図書館協会大学図書館部会編. JLA大学図書館部会研究集会「21世紀に向けて図書館員を考える」記録. 日本図書館協会, 1994.12, p.57-70

 JAL図書館の職員問題調査研究委員会が1986年(1983-85年分)と1989年(1986-88年分)に行なった大学図書館員の実態調査によれば,司書有資格者の絶対数が減少している.この減少を食い止める対策として,(1)人事方針の明確化,(2)専門職の役割と職務の明確化,(3)大学図書館職員養成のための研修プログラムの作成と実施,この3点を著者の個人的見解として上げている.

101)特集:大学におけるリーダーシップ. IDE現代の高等教育. No.376 (1996.5) 10論文

102)永田治樹. 学術情報と図書館. 丸善, 1997.5, 209p.

103)柴田正美. 問われる養成/求められる研修--「特集」編集の背景--(特集:問われる養成/求められる研修). 図書館界. Vol.49, No.3, p.116-118 (1997.9)

 「司書として勤務できる最低限の知識と技術のなかには,環境の変化に対応して自身を変えてゆく能力と,原理・原則を踏まえて思考する力も含んでいる」

 「今回の特集をきっかけとして,養成と研修の連携がより強まるとともに,図書館現場の要請に応じることのできる養成が深まり,より多くの図書館員が研修の必要性を認識して新たな展開を試みることを期待している」

104)塩見昇. 司書形成における養成と研修(特集:問われる養成/求められる研修). 図書館界. Vol.49, No.3, p.119-127 (1997.9)

105)前川恒雄. 司書養成教育と図書館学(「変革期」に立ち向かう図書館<特集>). 図書館界. 47(3) 1995.9 p.106-110